汝の名は、おかん!2
三寒四温とはよく言ったもので、春めいたと思ったら途端に寒さが戻ってまいりますが
皆々様、いかがお過ごしでござりましょうか。
わたくし、今年の冬、おかんに布団を贈ったのでございます。...
大寒に間に合う様に、ぬくぬくの羽布団を。
薄給の我が財布を振って。
我が実家は大変寒うございます。
夏は大変風通しが良く過ごしやすい我が実家は、冬も大変風通しがようございまして、有り体に申せば、すきま風で、うちの中でも氷点下になるのでございます。
よそ様のお宅は存じませんが、
あきんど家家訓は
「冬の廊下は走れ」でございます。
ぬくい部屋など数少なく、つまり、今いる部屋以外は外と同じ。
別の部屋に移動するためにはまず廊下を走ってその部屋へ行き、暖房を入れ、再び走って暖房の効いている部屋へ戻り、小一時間待機した後、その部屋の暖房を切って、温もったであろう次の部屋へダッシュ。
冬は夏の何倍もの運動量でございます。
そんな寒い冬を過ごすおかんに少しでもぬくい夜を味わってもらおうと、なけなしのお小遣いで、ええ布団を贈ったのでございます。
「おかん、布団、どうやったー?」
「うん、ちゃんと干してあるよ」
「温かったやろー?」
「まだ寝とらん。もう少しぬくくなったら、使うわー」
「は!?ナニ言うとんの?めっちゃぬくいから使いなよ」
「いやよ、あんな薄い布団でよう寝んわ」
「薄うても、ぬくいから!ダウンやから!」
「あんな薄くて軽い布団じゃゆっくり眠れんもん」
「マジで騙されたと思って使ってみなよ!ぬくいんやから!」
「騙されるのは嫌やわー。ぬくうなったら使うから」
「おかん、私が何のために大寒に間に合う様に布団送ったと思っとんの?」
ぬくいからしのごの言わず使え!
馬を水辺へ連れて行く事はできても水を飲ませる事はできない。
これほど真理をついた諺はない、と改めて思った事柄でございました。
皆々様におかれましても、おかんには十分ご注意くださいませ。